萩原で暮らす人たちの声

どきどき萩原

安江 史也さん

下呂市萩原町出身 2022年に大阪府堺市から下呂にUターン
農業機械の設計をしていた前職から現在は建築業界へ。
合同会社〈下呂でつくる〉で町づくりにも携わる。
ものづくりや写真、アウトドアが趣味。

〈自分たちで作る〉を存分に楽しむ下呂での暮らし

ー下呂に戻ろうと思ったきっかけは何かありましたか?ー

「30歳が近くなるにしたがって、これからどう暮らしていこうかな、どう生活していこうかなと考えるタイミングになって。

大阪の会社だったので、中堅社員になってくると、そのまま大阪で暮らしていくのか、それとも地元に戻るという選択肢なのかの2択が僕の中で出来ていました。

子どもの頃下呂で過ごした時間、田舎で過ごした時間が楽しかったんですよね。だから全然明確にはなっていなかったけど、このまま大阪で今の仕事を続けるよりも地元に戻って何か出来ないかなって。

60歳までこの仕事を続ける、大阪で住むことに対してあんまりワクワクしなかった。どこかハマらなかったんです。下呂には度々帰っていて、地元に帰った方が面白そうと考えることが増えていき、徐々にその気持ちが積み重なっていきました。

「子どもの頃に下呂で過ごした時間が楽しかった」が原点

Uターンへの気持ちが少しずつ膨らんでいったという安江さん。29歳で当時の大阪の会社を退職し、とりあえず地元に戻ってみようと決意。これから下呂で楽しく暮らせそうかな、と試す意味でも戻ってみたら“全然楽しいな!全然居れるわ!”となって今に至ったそう。高校から下呂を離れた安江さんにとって、実に15年ぶりのUターンでした。

ー帰ることに不安はありませんでしたか?ー

「(大阪にいた当時も)休みの日とかは結構帰ってきていたのもあって不安はありませんでした。

実際帰ってみると仕事相手も同級生の家だったりとか

「戻ってきたんだ〜」と言われたりとか、自然に受け入れてもらえていました。

タイミングも良かったんだと思います。転職も普通になってきて、今の仕事が決まるまでも1年間無職状態だったけど、“早く働かなきゃダメだよ”みたいに言う人もいなかったし、家族や両親も寛容に見てくれていたのも大きかったです。

あとは消防など地域の集まりなどにも誘われたら行くようにして、小さい頃から知ってくれている人たちだったので自然に戻っていった感じです。15年は長いように見えて地域の人の構成はそのままだったんですよ!」

ー今の仕事(建築の会社)はどのように見つけたのですか?ー

「当時僕の中では2年くらいはいろいろ試してみてもいいな。今までの機械系の仕事も置いといて違う仕事でもいいし、広く仕事も考えたいなと思っていました。自分がしたいことを1年、2年動いてたらやりたいことが何か見つかるだろうと。

農業が好きだったのもあって、トマト農家とか、高山の木工の学校の説明会を聴きに行ったりとか、せっかく地元で働くなら“その地域でこそ楽しい、その地域だからこそ意味ある”みたいなことが出来たら楽しそうだなと思ってて、色々見て回りましたね。

写真を撮るのも好きで、勝手に写真集みたいなものも作ったんですよ。kimonotoさんで働いている姉と姉の友達で着物で町ブラする写真の着物フォトブックを作ってkimonotoさんに置いてもらってました。そしたらそのスタッフの1人が見てくれて、その人の旦那さんが今(現会社)の社長だったんです。

別の日に姉からアイシングクッキーのイベントに誘われて行ってみたらそのイベントを企画していたのが(現会社の)社長の奥さんで、「今、人を募集しているから話を聞いてみない?」と言ってもらい誘われる形で入社しました。

繋がりから仕事に辿り着いたという安江さん。軸にあったのは、“好きなことを掘り下げたい”、“好きなことを仕事にしたい”、“生まれ育った土地のものを使えると楽しい”という想いでした。

「現会社の社長の話を聞き、“建築業界だいぶ面白いな。木を使うし、地元でやる意味あるな”と感じることが出来ました。家を建てる仕事ってそのお客さんがずっとそこに住み続けるわけなので、それにプラスアルファ住んでもらった地域が良くなったら絶対いいし、どんな仕事でも地域のためにならない仕事ってないんですけど、自分のモチベーションとしては自分の作ったものづくりでお客さんが喜んでくれて、それプラス地域がもっとよくなる、一緒に楽しめることがたくさん増えたら、これはやる気が出そうだなと思って。全然建築業界のことは知らなかったですけど、話を聞いてみたらこれは自分のやりたいことに合ってそうだなと思いました。会社の支社が妻の居る愛知県にあったことも入社理由のひとつです(安江さんは現在奥様がお住まいの愛知県との2拠点生活中)」

ー帰ってきてみて感じる下呂の良いところ、戻りたいなと思った好きなところを教えてくださいー

「自分たちで作ること、それは実態のある物(工作とか農業とか)もそうだし、地域のイベント(盆踊り大会など)とかも自分たちでやったりするじゃないですか、自分は作るということが好きだし、そういう環境にいたから好きになったと思うんですよ。大人に混ざってやらせてもらったりとか、採れたトマトや鮎を食べさせてもらったりとか、盆踊り大会で大人たちが焼く焼きそばを食べたりとか、大人たちがビール飲んでる雰囲気とか。

そういう自分たちで作ったり、したくてやっているみたいな雰囲気感が好きだったし、それがやっぱり地方の魅力かな。プラス自分はここで生まれ育ったから知ってる人もたくさんいるし、そういう繋がりの中で自分が好きなことが出来て楽しいです。

あとは自然のレベルが高いと思う!地方で川とか山自慢ってあるじゃないですか。その中でも下呂は自然のレベルが高いと思います。御嶽山もあるし、鮎釣りの名所だし、高山は木工が盛んだったりするし、僕はアウトドアが好きなのでどこの地域に行っても楽しめるとは思うけど、ここだとより一層楽しめると思います」

ー逆に地域の課題だなと感じるところはありますか?ー

「暗黙の了解みたいなものはあるよね。ルールが分かりにくい。僕はそういう部分も含めて好きだと思っているけど。消防の活動とか、地域の草刈りとか何のためにあるのかわからない。多分初めてきた人にはわからない。都会は様々なものが分業されてるけど、田舎は兼業ですよね。消防士にもなって、みんなで色々やって、人口が少ないこの広い土地で生きていくためみんなで色々やる。都会だとマンションで共益費払うところを払わずに自分たちでメンテナンスする。その分享受出来る自然が多い。

自分たちが生きていくためにやる活動なんだけど、その実感を持つのが難しいですよね、他のところに住んでた人からしたら。言葉で説明してわかるものでもないし、形骸化して意味なく続いてしまってるものもあるけど、水路の掃除とか絶対大事なものもある。

田舎暮らしってキャンプに近いと思ってて、ライフライン系も自分たちでメンテナンスしていくというか、暮らしを作るみたいなところが。そういう主体的な感覚を持ててると地域活動も意味あるなと。やらないと自分たちが困るから。

みんな田んぼをやった方がいい!田んぼをやると水路も気になるし、草が伸びてるのも気になると思う。

住んでいる地域に人が増えて欲しい、いい人に来てもらいたい、そう思うなら自分たちの地域ってこういう感じなんだよって伝えられるものがあった方が良いですよね。「地域の教科書を作りましょう」という人がいて、講演会が最近あったんですけど、それを聞いてなるほどなと思いましたね。」

ー帰ってきて良かったと思う瞬間は?ー

「朝起きた時に“もうちょっと寝てたいな”じゃなくて“今日はあれが出来るな!”と1日の始まりが前向きになったし、仕事が楽しくなりました。シンプルに人が少ないからやれることが多いし、自分がやる意味があるなと感じることが多い。主体性を感じやすくなりました。」

ー移住を考えている人にアドバイスをお願いしますー

ここげろ(※Spotifyのポッドキャスト番組「ここは岐阜県下呂市温泉だけだと思うなよ」)を聴くとか、ゲストハウス(上原地域のソラノイエ、馬瀬地域のelephant tree houseなど。両ゲストハウス共に移住者がオーナー)に行ってみてオーナーや地域の人と実際に話してみてほしいです。移住のイメージが一気に近くなって具体的になると思うので。旅行よりも一歩踏み込んだ、地域の人と関われることをするのがいいんじゃないかな。

この春(2026年春頃)僕も携わっているゲストハウスHagiがオープンする予定なので、この辺の地域や地方の暮らしが気になっている人はぜひ体感しに来てみてください。」

下呂は自分で何か作りたい、何かやりたいが満たされる場所だと語った安江さん。土地も広くて教えてくれる人もいる、すぐ人と繋がれる、何か始めると面白がってくれる人も多いから小さいことから始めやすいと言う。

2拠点生活を送りながら「やってみよう!作ってみよう!」を人生にも暮らしにも掲げて楽しんでいる姿が印象的だった。

新しく出来るゲストハウスHagiは「何か起きそうだなと思う場所」とのこと。普通の旅館に泊まったらただの観光で終わるところが、Hagiに泊まることでもう一歩地域のことが知れそうな場所にしたいなと語ってくれた。

下呂での暮らしは《自分たちで作る》を満たしてくれる。面白そう、やってみよう、という気持ちに忠実に辿り着いた安江さんのUターンはこれからも新しい何かを作っていくだろうというワクワクした空気感に満ちていた。

ライター プロフィール
hidany

hidany

2019年東京から下呂市馬瀬に移住。 身体や健康にまつわること、馬瀬の自然、猫が大好きです。