萩原で暮らす人たちの声

どきどき萩原

石田 俊介さん

京都府出身。2019年より下呂市萩原地区のトマト農家で2年間の研修を経て、2021年より就農。
明るい性格と人なつっこい笑顔で地域の方との交流を深め、地域に根付いた農業を展開中。

木の根のように人脈を広げ、地域に根付くトマト農家になりました

~田舎への移住に心配はありませんでしたか?~

出身が京都とはいっても皆さんがイメージする京都とは違って日本海側の端っこの農村です。農家も沢山あり、下呂市より田舎なくらいですよ。

父は公務員、母は丹後ちりめんの色付けをする家庭で育ち、小さなころは釣りや神社で走り回って遊んでいました。

下呂市に移住を考えたきっかけは大阪で訪れた農業フェア。帰りにはスケボーをするつもりでフラっと行きました。スーツを着た担当者が多い中、自分と似た格好で気さくに話しかけてくれた下呂市の職員さんに惹かれ、話がはずみました。下呂ならすぐに見に行けるなと思い電話番号を交換し、次の休みには実際に下呂市を訪れました。

トマト農家で5日間の農業体験をし、研修生や新規就農者との交流会に参加しました。自分より年下の彼らが活き活きとトマト作りをし、楽しそうに話す姿を見て、自分が農業をするイメージがリアルに思い浮かべられたことを思い出します。

自然の豊かさに加え全国的に有名な下呂温泉があること、研修生専用の住宅が月3千円(※)で利用できることなども後押しし移住を決めました。

就農後も市職員さんとの交流は続き、農業に関する相談だけでなくプライベートでの相談もしています。堅苦しくなく熱い思いをもっている方たちなので自分も無理せず、ありのままの自分を理解してくれているという安心感があるんです。

実は昨年12月に入籍したのですが彼女との出会いのきっかけも市職員さんからでした。知らない土地で暮らす中で公私ともに支えてくれる市職員さんの存在は本当に大きいですね。

※2021年時点での価格。詳細は下呂市農務課へお問い合わせください。

農業フェアから移住、就農、結婚と順風満帆に見える石田さん。移住で困ったことはなかったのか聞いてみた。

~移住をして生活や仕事で困ったことは?~

都会生活が長かったので、今まで車を運転することがほとんどありませんでした。自転車か公共交通機関を利用すれば事足りたので。でもこちらでは何をするにも車が要る。しかも一人一台。維持費もかかるし、運転することが習慣ではなかったので苦痛に感じます。これから歳を重ねていって、いつまで車に乗り続けるのかを考えると不安になりますね。

また、仕事の農業では単調な仕事をコツコツと続けることも多く、一人で作業をしていると疲れてモチベーションやパフォーマンスが落ちてきます。農繁期には早朝から夕方過ぎまで毎日農場で過ごし、ほぼプライベートの時間はありません。近くで気分転換に行けるようなお店もないし、欲しい時に急に仕事を頼める求人サイトもない。そこで休憩小屋には自分の好きなものや大事なものをおいて気分を上げています。ちょっと道具を取りにそこに入るだけで気分が違うんです。あえてこういう空間を農場内に作っています。

ここで友人や農業関係者とバーベキューなどの交流をすることもありますよ。

モットーは楽しくやりたいことをやる。自分自身の力で充実した生活をしていくために移住をしました。農業をするために生活をしているのではなく、楽しく生きる手段として農業を選んだ。トマト農家だからといってトマトしか作ってはいけない訳ではないので、地域の方と協力しておもしろい野菜作りにも挑戦したいと思っています。ここで長く生きてこられた方々の知恵や経験をお借りして、次の世代により良いものを残す。どんなものができるのか今からワクワクしています。ただ野菜を作って生活を安定させるだけでなく、移住者ならではの視点で下呂市の資源や素材を活かして、この地を盛りあげていきたいと思っています。

~地域の方とはどのように関わっていますか?~

会った方には自分から挨拶をしていました。ただ、馴染もう…と意識していたのではなく、自分自身が下呂市のこと、人を知りたいという強い気持ちがあったので、当たり前のアクションでした。また、地域の行事にも積極的に参加しました。下呂市には地域ごとに古くからの慣習や祭りがあって、地域の方が代々受け継ぎながら守り続けてきている分、熱い想いがあるんです。移住してきた当初はその『想い』や『重み』みたいなものは全く分からず参加しました。そのおかげで農繁期の忙しい時期と地区の役の仕事が重なり、どうにもこうにも回らず本当に悩んだこともありました。

それでも今振り返るとやってよかったという思いしかありません。

本業のトマト作りと違うことに精を出すことは関係のない時間のように思えるけど、それがあったおかげでお互いのことを理解しあい、手伝いや応援をしてくれる方が次々に声をかけてくれるようになりました。地域の方との距離感は比べ物にならないものになったんです。遠回りだと思った行動が一番の近道を作ってくれたと感じています。

下呂市の方々は人脈が深く、全然違うきっかけで知り合った方々がつながっていることがよくあります。だから一人と知り合うと木の根のように一気に広がっていきます。下呂市に移住して友達は増えましたよ!

~振り返って今、何を思いますか?~

当初は結婚をする気もなく、全国どこでもいいと思って始めた移住計画でしたが、今となっては全てが繋がっているように思います。長くやっていた前職の接客業も農業とは全然関係ないように思えますが、移住、就農するのにその経験が役立っているなと思う事がよくあります。

例えば、接客業で身についたコミュニケーション力や人を見る感覚。見知らぬ土地で生活をしていく上でどんな風に土台を作っていくのか、それは周りの人に大きく影響されると思います。今の自分が恵まれた環境で生活できるのは自分の勘を信じて進んだことも理由の一つではないかと思います。また、お客さんにいかに見やすく迅速に商品を届けるかを考え、売り場を設計した経験などは今の農業ですごく活かされています。一人でむかえる農繁期は合理的に作業を進めることが結果を左右します。ここを乗り越えられたときは強い自信になりました。

~移住を検討されている方へメッセージをお願いします~

これまでやってきたことと、移住先でこれからやることが必ずしも関連づいている必要はないと思います。時には自分の勘やワクワクする感覚を優先してみることもありだと思います。そして、どんなことでも楽しもうとする気持ちを忘れない。

自分が心地よい環境を自分でつくっていくことが大事だなと感じます。

 

ライター プロフィール
cune

cune

はじめまして!3人のママになり、長年暮らした下呂をまた違う目線で見られるようになりました。身近な発見や幸せを皆さんと共感できたら嬉しいです。