下呂で暮らす人たちの声

どきどき下呂

中村 宙樹さん

兵庫県出身
2018年10月に地域おこし協力隊として、下呂市に移住
2011年11月に下呂市門和佐地区の古民家を改装して咖喱奔放オープン
妻、息子2人の4人家族

「誘われたら行く」で深まった地域との絆

移住のきっかけのひとつは“畑仕事”

約束の時間に中村さんが営む多国籍料理屋 咖喱奔放(かれーほんぽう)に着くと畑仕事をしている中村さんが迎えてくださった。
畑の横には3日前に種まきをしたんだというポットが並んでいる。

料理人である中村さんが移住をしたいと思うきっかけになった理由の一つが
自分で野菜を作れたら面白い、
自分で作った野菜を料理できたら面白い、
ということだった。

畑ができる移住先ならいろんな所があるが、なぜ下呂市を選んだのかそれは「飛騨川がかっこいい」こと。

ユーラシア大陸を自転車で横断したという経歴を持つ中村さん。
その時に見たパキスタンやネパールの山岳地帯の川に飛騨川が似ていた。
とてもかっこいいと思った。
それが移住先を下呂市に決めたきっかけの一つだった。

下呂市に移住を決めてからは、トントン拍子だった。
移住先を下呂市に絞って調べ始めたら、地域おこし協力隊で「料理人」を募集している地域があった。
それが、今住んでいる下呂市上原(かみはら)地区だったのである。
地域おこし協力隊に就任し、ご家族(奥様、当時1歳の息子さん)とともに、下呂市に移住してきた。

*地域おこし協力隊って、なに?
地域おこし協力隊とは、1年から3年の期間、地方自治体から委嘱を受け、地域で生活し、様々な地域活動を行い、地域力の維持・強化を図る取組である。外部から赴くからこそできるきっかけづくりで、地域を盛り上げていく。

移住してみて衝撃を受けたことは・・・ 

実際、移住してみて、衝撃を受けたことは、地区の人みんなが知り合いだということ。
自己紹介をすると、〇〇の息子、〇〇の孫、ですべてが伝わる。

みんなが知り合いの地域に、
地域おこし協力隊としてやってきた「ユーラシア大陸を自転車で横断した料理人」
というちょっと変わった経歴を持つ自分は常に見られている感じがあったという。

川崎から移住してきて不安だったことや、不便なことはありましたか?と問うと、
「不安に関しては、ご近所さんのこととかありましたけど、
あんまり覚えてないなあ。
覚えてないから、あんまり不安じゃなかったのかな。」
と笑う。

「不便に関しては………特にない。」

「SNSがあればこと足りることが多い。
変な話Wi-Fiさえつながれば、そこまで不自由なことはないかな。」

「時間の使い方は、大きく変わった。
都会にいる時は、行動範囲が店の中だけ。
今は、時間ができると、畑に行ったり、山水を見に行ったり、薪拾いに行ったり、
一番変わったのは、子どもとの時間ができたこと。
いってらっしゃい、おかえりなさいができるようになりました。」

地域イベントへの参加のキーワードは・・・

門和佐区伝統の地歌舞伎出演、
下呂温泉まつりの椀みこしへの参加、
下呂市内小学校・中学校・高校での臨時講師、
地域のマルシェやイベントへの参加など、活動的な中村さん。

どのように地域にとけこんでいったのかを伺うと
「結構僕、どっちかって言ったら受け身だから。
歌舞伎も誘われたから行った、だけなんです。」
誘われたら行った、だけの地歌舞伎だったが、行ってみたら、役者として出演する側にまでなった。

それは、
「単純に感動したのもあったんですよ。こんなことやってんの?!って。
仕事が終わって毎晩集まって稽古してるの?!って。
僕の感覚だとできないですよ。
すごいなって思ったんですよ。
これが感動のひとつ。」

「稽古に行くと、みんな稽古着を着て稽古して
終わったら、きちーんとしわにならないようにたたむ。
そんな姿にも感動しました。」

誘われたら行くが感動に変わり、この人たちともっとつき合いたいという思いが生まれ、
地域の人とのつながりが深まっていった。

中村さんの参加のキーワードは、ふたつ。

キーワードひとつ目は、「受け身。とにかく誘われたら行く」
地元のお祭り、地域のマルシェ、市内キャンプ場での料理イベントなどなど
誘われたから参加したものは多数。
地元の学校の講師としても招かれ、
子どもたちに「人生」というテーマで語ってきたそう。

キーワードふたつ目は、「中から参加」
みこしなら、見る側ではなく担ぐ方。
歌舞伎なら、演じる方。
まつりだったら、のぼり旗を立てるところから。
餅投げだったら、餅をつくところから。
朴葉寿司は、作るところから。
たくさんの地域の行事に中から参加していった。

地域にとけこむのに、ひとりではなく“家族”がいたことの心強さは、とても大きかったという。
「今度は、料理を差し入れする等、自分ができることで地域に貢献していきたいな。」
と語る。

移住を考えている人へのメッセージ

「受け身!
身をゆだねたら楽しいですよ。
自分の意志は出しますよ。
けど、最初はね、ゆだねる感じでいいんじゃないかな。」

「移住してくると、間違いなく好奇の目で見られるんですよ。
好奇の目で見られていることを楽しむ。
もっと見て!もっともっと見て!
いい意味でだけど、見られるのは当然だし、
あれこれお節介されるのも声かけられるのも当然なんだから
もう乗っかっちゃえばいい。
乗っかっちゃって楽しめばいい!
楽しんでください!」

飛騨川の流れに魅せられ、下呂市に移住を決めた中村さん。
人生の流れそのものを楽しむ豊かさを中村さんから感じた。

ライター プロフィール
あつこ

あつこ

岐阜県高山市出身、下呂市で一番北側の小坂町に住んでいます。夫、夫の両親、3人の子どもたちと暮らしています。自然のありのままの美しさや、家族との生活の楽しさをお伝えしていきます。