下呂で暮らす人たちの声

どきどき下呂

鈴木 雅人さん

出身地:愛知県豊田市
家族構成:妻、息子
職業:旅館、マーケティングコンサル事業経営
移住歴:1年半

温泉街を浴衣で一杯に

温泉街を浴衣で一杯に下呂市森の阿多野谷沿いにある新築旅館「寅家」。これまで下呂市の温泉街にはあまりなかったスタイルの宿として注目を集めている。

「寅家」は食事、温泉が館外で自由に満喫してもらうリーズナブルな素泊まりタイプの宿泊施設だ。和モダンで清潔感あふれる館内には6つの部屋があり、シャワー、トイレ、アメニティも完備されている。

コンセプトは「浴衣で温泉街の街歩きを楽しんで頂く。」

代表の鈴木さんは、「日本三名泉の下呂温泉というブランドは、観光客に様々な期待を頂かせる。ただ現状は旅館の中で全て完結するスタイルの滞在が多く、せっかく風情のある温泉街をもっと自由気ままに楽しみたいという要望はあるはず」という考えでこの旅館を立ち上げた。

その為「寅家」では温泉街のお店や食べ物、おすすめのスポットの紹介など多言語でのコンシェルジュサービスに力を入れている。観光客は色とりどりの浴衣を着て下駄で温泉街を散策して楽しむ。伝統的な旅館風な外見とは裏腹にオリジナリティとホスピタリティの絶妙なバランスが居心地の良い空間をつくりだしている。予約サイトの口コミ評価も上々だ。

国際交流が好き

鈴木さんは上海に11年の在住経験があり、奥さんも中国人だ。東京の大学を卒業後、上海留学を経て広告・IT営業、人材事業のマーケティング職を務めてきた。日本人としては珍しく現地で中国人向け書籍の出版経験もある。帰国後は、父と兄弟が営む会社でマーケティング担当として働く傍らインバウンド*のマーケティング事業部を立ち上げ、空港や百貨店向けにサービスを提供してきた。

一貫して根底に有るのは国際交流が好きという思い。好きなことを仕事にする為の手段として下呂市で外国人観光客をメインターゲットとする旅館を独立開業することに決めた

*インバウンド:訪日外国人観光客による日本国内での消費活動を指す観光用語。

縁もゆかりも無い土地で起業

新しいスタートの地を下呂にした理由を彼はこう語る。

「まず候補にあげたのは高山でした。いうまでもなく海外からのお客様が集まる場所です。
しかし、高山はライバルが非常に多い。名古屋は観光では素通りされることが多く、コストもかかる。では、その間にある日本三名泉の下呂温泉は?と注目すると、当時の訪日外国人宿泊件数は高山市の5分の1しかなく、そこに大きなポテンシャルを感じました。」

「でも縁もゆかりも無い土地に移住して、いきなりやったことの無い旅館業をゼロから立ち上げるというのは簡単では無かったです。もちろん最初は妻に反対されました。
ですが有難いことに、準備段階でこちらの創業支援補助金や、商工会や市役所の方々の多大なサポートを頂けたこと、下呂の事業者さんからマーケティングサポート業務を長期契約で受託したりしたお蔭で、なんとかなるだろうと不安も払拭されていきました。
プライベートでも幼い子供をこども園での受け入れて頂けたことや、ファミサポ(子供預かり)制度、移住の助成金なども予想以上の手厚いサポートがありすごく助かっています。これらが無かったら当然もっと難しかったと思います。」

コロナ禍

「寅家」の開業は2019年12月。開業後数か月で新型コロナウイルスが世の中に広がり、予想もしないスタートとなった。外国人観光客は徐々に減り、緊急事態宣言発令後にはインバウンドは消滅状態だったという。

しかし鈴木さんは、「お蔭様でそんなに数字は悪くなかったです。」と昨年を振り返る。

「愛知県出身の自分にとっても温泉と言えば先ず思い浮かぶのは、下呂温泉です。中部地方を中心に国内での知名度は抜群です。また、こちらの観光協会はPR力の強さ、状況にクイックに対応していく柔軟さや経験値の高さに驚きました。頼りになります。
そして当館のコンセプトである “浴衣で温泉街の街歩きを楽しんで頂く” は、実は日本人からもニーズがありました。 下呂温泉をすっかり気に入って、既にリピートしてくれているお客様も複数組いらっしゃいます。とても有難いですね。」

「また、コロナについては今までのところ温泉街で感染が広がった例は無く、きちんと対策していれば観光自体にリスクは高くないことを実感しています。今後も引き続き対策は怠らないようにしていきます。」

下呂でビジネスについて

「ビジネスを考えている方に向けてですが、観光はこれからもう伸びシロしかないと思います。温泉街はまだまだポテンシャルが大きいと考えています。もちろん自身の強みやマーケットの理解が必要ですが、思い切って飛び込めばチャンスはあると思います。小さい街なので競合がひしめいているという訳ではなく、逆に周囲と協力関係を構築しやすいですし、キーパーソンにすぐ会える点がいいですね。その意味で上海の日本人社会みたいだなと感じました。また、行政からも多方面でサポートして頂けるので本当に助かります。」

そんな鈴木さんの今後の展望を尋ねると、旅館業と、マーケティングコンサルの2本柱でやっていくことは変わらず、「寅家」の増築も計画中とのこと。今までに得た知見を活かす新サービスも考えている。

浴衣姿の観光客が少ない下呂の温泉街にどれだけの花を咲かせて行くのだろう。

今後も彼から目が離せない。

旅館 寅家さんの公式サイトはこちら↓

https://www.torayajpn.com/

ライター プロフィール
cune

cune

はじめまして!3人のママになり、長年暮らした下呂をまた違う目線で見られるようになりました。身近な発見や幸せを皆さんと共感できたら嬉しいです。