馬瀬で暮らす人たちの声

どきどき馬瀬

二村照美さん

東京都出身
夫が下呂市馬瀬にある実家の家業を継ぐのをきっかけに
2006年、生後6ヶ月の長女を連れて下呂に家族移住
3人の子育てをしながら2019年にシフォンケーキ教室atatakaを立ち上げ現在は教室だけでなく菓子の製造販売も行っている

縁あって移住した下呂で広がった田舎ならではの『あたたかな暮らし』

結婚当初、地元東京で小さい頃からの夢であった保育士の仕事をやっていたという二村照美さん。
その当時は何の疑いもなく「このまま一生東京に住み続けるもの」と思っていたという。

そんな彼女が何故下呂へ移住することになったのか、そしてその後の起業に至るまでの経緯とここでの暮らしに対する今の思いを聞いてみた。

ー移住のきっかけは何ですか?
もともとは夫婦で東京にアパートを借りて住んでいて、夫が三男だったこともあって何の疑いもなくこのまま東京に住み続けるものと思っていました。その後長女を妊娠中に、夫が実家の家業を継ぐかも..という話が出てきて。その当時自分はすでにやりたかった仕事(保育士)をやっていたこともあって、今度は夫がやりたい事を応援したいという思いがあったので夫に決断を任せました。結果的に家業を継ぎたいという夫の希望で下呂での暮らしが始まりました。

ー移住前にも何度か馬瀬を訪問されていたのですか?
移住前に夫の実家を訪れたのは結婚前の一度だけでした。

ーという事は、その当時家族以外の知り合いはゼロということですよね。地域にはどんな風に溶け込んでいったのですか?
夫の同級生の友人達が最初から気にかけてくれて、率先して声をかけたりとすごくウェルカムな感じで迎え入れてくれたのが本当にありがたかったです。あとは長女が通っていた乳幼児学級でお母さん同士の繋がりができて、一緒に子育てをしながら自然と輪に入っていった感じです。

子育て世代の女性達を支援するサークル活動から広がった新たな世界

ー移住後になにかお仕事はされていましたか?
子供達がまだ小さかった頃に夫の実家の家業の経理の仕事をやり始めてそれは現在も継続しています。最初の頃は仕事よりも子育て中心でしたが、2016年頃に下呂市の呼びかけで各地域の子育て世代の女性達が集う会に参加して、その時に出会った仲間達と一緒に「tambourine」というサークル活動を始めました。

ー具体的にどんな活動をするサークルですか?
「tambourine」の名前には、”みんなで輪になっているうちに、それが楽しみになっていくといいな…”という思いが込められていて、専門の講師ではなく参加者同士から学ぶ様なワークショップを開催しています。例えば調理実習やマクラメ編みやヨガなど、親子で参加型のものや託児所付きのものなど子育て世代でも参加しやすいサークルです。その後、tambourineの活動がきっかけで2017年に「NPO法人みらいろ」の設立に副理事として携わることになって、ここからは実際にお仕事として子育て支援のワークショップなどを企画運営していました。

ーその後どのような経緯でご自身のお菓子作り教室を立ち上げられたのですか?
最初はsnsの投稿で友人がシフォンケーキ作り教室を始めたのを見て「シフォンおいしそう!」と思ってレッスンを受けに行ったのがきっかけです。実際に作ってみたら本当においしくて「私もこのシフォンケーキを広めたい!」と思い資格を取りました。その当時はまだ夫の実家で同居していたのですが、将来的に自分達の家を建てることが決まっていたので新居に引っ越したらシフォンケーキ教室を始めようと決めて準備を進めていました。

ー実際にそれからどれくらいで教室を始められたのですか?
資格を取った翌年に家を建てることになって、さらにその翌年の2019年に教室をオープンしました。

ーたった2年で!?資格を取ってからの展開がすごく早いですね!
今改めて振り返ってみると確かに。ただ、自分のなかでは移住してからの約10年間、ずっと楽しみに温めてきたマイホームの構想だったので、実際に家を建てることが決まってからは本当にスムーズで早かったと思います。

ーまさに照美さんの夢が詰まったドリームハウスなんですね。
本当にそうですね。東京に住んでいたら実現できなかったことだと思います。

ー実際にこの場所で教室を始めるにあたって、集客に不安はありませんでしたか?
まだ子育て中だったこともあって、手広くやろうというよりはマイペースにやっていこうという感じだったので、最初は乳幼児教室にチラシを配るところから始めました。それで地元の子育て仲間が来てくれる様になって。その後はsnsの投稿や生徒さんたちから人づてに伝わって徐々に広まっていった感じです。現在はありがたいことに市外や県外から通ってくださる生徒さん達もいらっしゃいます。

屋号『atataka』に込められた思いと、その先に繋がった自分自身のあたたかな暮らし

ー教室の屋号の『atataka』に込められた思いを聞かせてください。
実はatatakaを始めるずっと前から、いつも自分の中に ”あたたかな暮らしに繋がりますように”という思いがあって。人って自分の好きな事をしていると自分の心が満たされて、余裕が生まれて、人にも優しくできて、またその優しさが返ってくると思うんです。そういう豊かな心を育むための一つのきっかけが好きな事をする事だと思っていて。だから教室に来てくださる方達にとっては、シフォンやお菓子を作る事で心が豊かになって、その方達のその先のあたたかな暮らしに繋がるといいな、、という思いがこの屋号に込められています。現在は製造販売の方も行っているので、生徒さんに限らずatatakaの商品を手に取ってくださるすべての方にとって同じ思いでいます。

ー現在は教室だけでなく、シフォンケーキやビーガン米粉クッキーなどの菓子製造販売の方にも幅が広がっていますよね。
教室を始めてしばらくして、購入したいと言ってくださる方が出てきて新たなお菓子作りの資格と菓子製造の許可を取りました。現在は高校のビジネス情報科の生徒さん達や地元で活動する方達とのコラボ企画など、地元の特産物を使った新商品の試作に日々取り組んでいます。始めた頃はatatakaの活動内容がこんなに広がっていくとは思ってもみませんでした。

ー最後に、下呂に移住して18年経った今の思いを聞かせてください。
最初は夫の決断がきっかけで移住したけれど、それがあったからこそこうして夢のお家を建てられて好きな仕事をやれている現在の暮らしがある。今は心から移住して良かったと思っています。もちろん環境面(夜の暗さや冬の寒さや娯楽が少ない等)で不便さや不安を感じる面もあるけれど、それ以上に自然の美しさや人の温かさに救われてます。

今回の照美さんの下呂移住は、決して彼女自身の積極的な選択ではなかったが、常に彼女の根底にある『あたたかな暮らしに繋がりますように』という思いがこの土地で見事に実り、今の彼女自身そして彼女の周りの人たちのあたたかな暮らしへと繋がっているのだという事を強く感じた。

ライター プロフィール
よっしー

よっしー

2021年秋、とある古民家との出会いをきっかけに夫婦で名古屋から下呂に移住。現在は馬瀬の美しい自然に囲まれて夫婦と猫2匹でのびのびとした里山暮らしを満喫しています♪四季を通して五感で味わえる里山暮らしの豊かさを地域の方たちに教えていただきながら日々初体験を更新中♪ここならではの暮らしの魅力をわたし目線でお届けできたらと思います!