金山で暮らす人たちの声

どきどき金山

鈴木 亘さん

福岡県福岡市出身。東京と北海道でNHKディレクターとして6年働いた後、下呂市金山町に地域おこし協力隊として移住。現在は古民家を改装したボルダリングジムを経営する傍ら、廃校になった小学校を活用したコミュニティ作りに奮闘している。

「やろまいか」の精神で地域おこし

廃校になった小学校。どこか懐かしさが残る「保健室」と書かれた木製の看板がある部屋でにこやかな笑顔で出迎えてくれたのは、現在金山町で集落支援員として活躍されている鈴木亘さんだ。

(※集落支援員:地域の実情に詳しい人材で、集落対策の推進に関してノウハウ・知見を有した人材のこと。)

鈴木さんは元々東京住み。NHKで6年働き、ディレクターとしての仕事に達成感を得られるようになったころ、近所のボルダリングジムを訪れるようになった。複数人で協力して行う番組作りとは違い、自分一人で壁に向かい取り組むボルダリングの面白さや奥深さに魅了され、後にNHKを退職。ボルダリングに熱中する日々が始まった。

そんな中、下呂市金山で募集された「ボルダリング×地域おこし協力隊」という全国初であろう取り組みを目にし、すぐに心を決めたそうだ。さらに調べていくうち、その取り組みを実現させるため奮闘した地元タイヤ屋さんの情熱に惹かれ、縁もゆかりもなかった下呂市に移住することとなった。

 

「初めての場所や、新しいことに挑戦することが好きなので、ワクワク感や楽しみしかありませんでした。不安は特になかったです。」と、目をきらきらとさせて、まるで少年のような笑顔でお話しする鈴木さん。

金山の魅力を尋ねてみると、

「金山には、新しいものとの出会いや新しいことへのチャレンジなど、変化を恐れない人が多いように感じます。自然豊かなのはもちろんですが、面白い人が大勢いることが金山ならではの最大の魅力だと、僕は思います。」

キーワードは「ないなら作ってしまおう!」

金山で暮らすうえで不便な点や課題を尋ねると、

「一人で集中できる場所がない点ですかね。家だと誘惑が多くて集中できない。かといって静かすぎるところもあんまり…。なので、ないなら自分で作ってしまおうと考えました。一人で集中して作業ができる、それと同時に地域の方がゆっくり過ごしたりおしゃべりを楽しめたりできるような、カフェ兼コミュニティスペースを廃校の一室を利用して作りたいと考えています。カフェを作る一番の理由は、もちろん地元の方々の希望でもありますが、自分が使いたいからです(笑)。カフェで提供しようと考えているジャムやパンも一から試作しています。まずは自分が良いと思えるような場所にする。さらにそれを地域に広げて、地域の人にとっても居心地のいい場所にしていけたら最高ですね。」

 

金山に住んでいるうえでの課題を尋ねると、

「あらゆることにおいて選択肢が少ない点だと思います。例えば、金山に住んでいる子どもたちは、学校に通うのにも一苦労だったり、学校の数が少ないので進学先も限られていたり…田舎に住んでいるからとあきらめるのではなく、このデメリットを良い方向に変えていきたいと思っています。」

『本物』に出会う体験を生み出す

「選択肢の少なさでいえば、人との出会い。特に『本物』に出会う機会の少なさにもつながりますね。私はNHKで働いていた時に多くの『本物』に出会う経験をさせてもらいました。

この経験は自分に多くの刺激を与え、成長をさせてくれたので、下呂の子どもたちにも『本物』と出会う体験をたくさんしてほしいと思い、実際に今年の3月にボルダリングの銅メダリストの野口啓代さんを金山にお呼びして、子どもたちが『本物』のアスリートと触れ合える機会を設けました。

東京などの都市部では多いですが、地方でもこういった機会を増やしていって、子どもたちにとってかけがえのない経験と思い出を残していきたい。またその経験が子どもたちの未来につながってくれたら最高だと考えています。」

 

移住に伴う地方の不便さや不安などのマイナスな言葉に対して、鈴木さんの回答はどれもプラスとして返ってくる。できないをできるに変えていく。このポジティブ思考は元からあったものではなく、NHKで働いた6年間の苦悩によって形成されたものだとおっしゃる鈴木さん。ディレクターとしての仕事を通して、自分の中で面白いと思うものに対する「軸」が形作られたことが、ボルダリングに熱中し、ボルダリングによる地域おこしを始めるきっかけの一つとなったそうだ。

学校はみんなにとっての居場所

現在絶賛進行中の、廃校を活用したプロジェクト。校内を案内してもらうと、跳び箱が椅子として設置されていたり、校長室の机が卓球台としてリメイクされていたりなど、学校らしさを残しつつも遊び心あふれる魅力的な空間となっていた。

なぜ空き家ではなく学校なのか、学校であることの意味を尋ねてみると、

「空き家は個人のものだけれど、学校はみんなにとって思い入れのある場所。金山に住む多くの人たちにとってここは母校です。『母校で何かやっているな、見に行ってみよう』と思う人はたくさんいるでしょう。地元の人たちに『また来るね』といってもらえるような場所にすることができたらうれしいです。」

 

最後に、移住を考えている人に向けてメッセージをいただいた。

「一言でいうなら『やろまいか』ですね。ここに行きたい!と思った自分の気持ちを信じれば、きっといい方向へ進んでいくんだと思います。まずは、自分を信じて飛び込んでみること。もちろん苦労はあります。でも、それ以上に素敵だと思える色々な人との出会いや、新しい人生が待っていると思いますよ。」

 

数十年後の未来を見据え、金山に住む人たちがこの場所に住み続けたいと思えるような町にしていきたいとおっしゃる鈴木さんの挑戦から今後も目が離せない。

※「やろまいか」…岐阜(飛騨地方)の方言の一種。「~まいか」は「~しましょう」の意味を持ち、「やろまいか」で「やろうじゃないか、やってみよう」の意味となる。

ライター プロフィール
mirairo

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下呂市の子育て世代の女性たちが「下呂の暮らしをもっと楽しく!」と 立ち上げたみらいろ。日々の暮らしの中にあるあったかい時間を多くの人に 届けていきたいと思います!暮らしに結びついた下呂の様々な情報を発信します。