萩原で暮らす人たちの声

どきどき萩原

谷下 竜一さん、美紀さん

下呂市萩原町出身。
2020年に新規就農し、夫婦で28aの夏秋トマトの農園を営んでいる。
2024年に有機JAS認証を取得し本格的な有機農業をスタートさせた。

農業を始めて気づいた下呂市の魅力 トマトを通じてふるさと下呂の風を届けたい   ~谷下農園~

下呂温泉から車で約20分の萩原町宮田。国道から道を一本入ると辺りは田んぼに囲まれ穏やかな風が吹く。

国道からは見えないが、道を挟んだ両サイドには大きなハウスがずらりと並ぶ。
出迎えてくれたのは農園を営む谷下ご夫妻。
お二人ともに下呂市の出身で3人のお子さんを育てながら夫婦で農園をスタートされたという。
もともと介護福祉士をされていた竜一さんが就農を決意しそれをサポートする形で美紀さんが参加した。

初めての農業はゼロからのスタート

-なぜ農業を選ばれたのですか?-

「前職はシフト制の仕事だったので家族とはすれ違いの生活が続いていました。また、多くの利用者さんとの別れを繰り返すうちに自分の人生について深く考えるようになりました。丁度40歳になるタイミングでこれが最後の転職になるだろう。それならば人に使われる立場ではなく自分の選択で自由に働け、家族との時間もしっかりと作れる仕事がしたいと農業を新しいスタートに選びました。」

 

-実際に農業を始めて生活は変わりましたか?-

「日が昇ると動き始め、日が沈むと家に帰る毎日になり生活が整いました。夜は大体10時前には寝ているので体調も崩さなくなりました。自然に囲まれ四季を感じながら植物を育てていると穏やかな気持ちになり、日々を幸せに感じます。これまでの生活では感じられなかった感動や充実感に満たされ、自分が感じていたストレスがとても大きなものだったのだと初めて実感しましたね。」

 

一方美紀さんにはまた別の大きな変化があったという。

「農繁期は朝から晩まで休む暇がないくらい仕事に追われます。合間をみて家事や子育てもしなければいけないので余裕がなくなり毎年メンタルに不調をきたしていました。そこでそれをきっかけに家事を分担することにしたのです。農繁期を過ぎると夫が食事担当になります。こんな小さなことですが私にとっては信じられないくらいの大きな影響がありました。自分の中に無意識で存在していた「女性が家事・育児をしなければいけない」という考えに縛られていたことに気づき、夫婦で意識を変えていきました。少しづつ家族の協力を借りられるようになり身体も気持ちも楽になりました。」

 

生産から販売までを担うのは大変なことも沢山あるがそれ以上のやりがいや自由度の高さにも魅力を感じているという。とはいえ、未経験での就農に不安はなかったのだろうか。

 

「就農に関しては国や市の強いバックアップがあり、補助金や農家での研修、農業簿記講座などフォロー体制が充実しています。市の担当課の方もとても親切でいろんなことを手助けしてくれる心強い存在ですよ。同世代~若い世代の移住農家さんもいて情報交換や悩みごとの相談なども気軽にできる仲間が居るのがありがたいです。一緒にバーベキューやお酒を飲みながら話をすると移住者ならではの意見があり、刺激になっています。」

みんなで作り上げた最高の空間

-農園で開催された「青空トラットリア」もそんなお仲間との企画だったのでしょうか?-

青空トラットリア ~ハウスで味わう極上空間~ | 下呂スタイル魅力発信プロジェクト

「そうです。何か面白いことをやろうという話から始まった企画でした。トマトを扱ってくださっているレストランのシェフや農業仲間、市職員さんの協力のおかげで下呂市の魅力がいっぱい詰まった素晴らしいイベントとなりました。普段自分たちが仕事をしながら見ている美しい景色にプロの料理や演奏が加わり唯一無二の最高な空気感が出来上がりました。」

「異業種の方との繋がりもまた、私たちを成長させてくれる大事な存在です。農業を始めてからこれまでにはなかったご縁がどんどん広がり、下呂市にもいろいろな価値観を持った方が居ることを知りました。それと同時に改めて気づく下呂市の魅力もありました。いつも当たり前にあるものでも自分以外の方の発想でみると一瞬で宝物になることがある。下呂にはまだまだそういうものが沢山あるように感じます。」

下呂市の魅力を伝えていきたい

-今後はどのような活動をしていく予定ですか?―

「私たちがつくるトマトもまた下呂市の魅力が沢山詰まった宝物だと思います。美しい空気や水、土、自然の恵み、そういうものを感じていただけるようなトマトを作りたいと思っています。私たちを育ててくれたふるさとにほんの少しでもお返しできたら嬉しい。これまでと変わらず自然を慈しみ、楽しみながら農業を続けていくだけです。」

 

毎日見ている同じ景色。色あせているようでも角度を変えればキラキラと光り輝いて見えることもある。未経験で始めた農業だからこそ、その角度が大きかったのかもしれない。

帰り際、後ろから春の匂いのする風が吹いてきた。ずっとしまってあったワンピースを出してみよう。そんな思いを胸に農園を後にした。

ライター プロフィール
mirairo

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下呂市の子育て世代の女性たちが「下呂の暮らしをもっと楽しく!」と 立ち上げたみらいろ。日々の暮らしの中にあるあったかい時間を多くの人に 届けていきたいと思います!暮らしに結びついた下呂の様々な情報を発信します。